漆塗りMGエピオンを作りました
はい。
制作期間3ヶ月、MGエピオンがようやく完成しました。
コンテストに出したろ〜と思って軽い気持ちで始めましたが、やはりというか思った以上というか、非常に難儀しました。
手を入れたところ
- 赤、黒パーツに本漆を使用
- メタリックパーツにシタデルを使用
- 緑クリアパーツはエアブラシ使用
つまるところ、ほぼ筆塗り全塗装です。
それ以外はあまり手を加えてません。MGなので合わせ目も少なく、やらなくてもまあいっかという気持ちでやりました。
改修より塗装・素材で勝負してる感じです。高級食材の素揚げみたいな。
色々考えたんですが、ディテールがしっかりしてて素組みでも十分かっこいいので、その方が映えるかなと判断して制作しました。あとこれ以上やったら絶対締切間に合わない。
いきさつとか
きっかけはエディオンガンプラコンテストの告知でした。しばらくガンプラ作ってなかったしやるか〜と思ってやることにしました。
で、何作ろうかな、と。
せっかくだから普通に作るよりなんか尖ったもの作ってビックリさせたいなという思いがありました。
そこで選んだのが、漆です。
大学で専攻していたため、工程はわかりますし、やってる人もあまりいません。レア感増していいんじゃね!?と言う軽い気持ちでした。
以前人に漆をやってたというと「ガンプラに塗ってや!」と言われたこともあり、いつかやってみたいなと思ってたことだったので、今回行動に移すことにしました。
伝統工芸の技術云々や、廃れつつある漆に興味を持ってもらいたいみたいな気持ちは、まあ少しはあったかもしれませんが、正直そこまで考えてませんでした。
「カッコいいものに良いもん塗ったら超カッコいいんじゃね!?」ぐらいの薄さです。
で、エピオンと天ミナが赤と黒でカッコいいなと迷い、どっちがいいか友人に聞いたところ即答で「エピオン」と言われたのでエピオンにしました。
今思えば、漆をやってた頃から数年のブランクがあったため、漆塗りの大変さを忘れかけてたからできたことかもしれません。
漆ってなんぞ
そもそも漆という塗料のことを知っている人はあんまりいないと思います。
伝統工芸のお椀や箸に塗られてるアレです。
漆は「ウルシノキ」という名前の樹木から採れる樹液です。触るとかぶれます。
なんとなく知ってる方は、漆の色は黒や赤のイメージが強いと思います。
元の色はクリームっぽい、明るい茶色です。とったままの状態の漆のことを生漆と言います。これは下地とかに使います。
細かいことは省きますが、この生漆を精製して鉄分を混ぜると、化学反応で真っ黒い漆ができます。呂色漆って言います。
「漆黒」って言葉がありますが、これは呂色漆の黒から来てるんですね。
他にも顔料を混ぜた色漆っていうのがあります。白の顔料を混ぜた白漆ってのもありますが、漆の元の色があるので完全な白ではないんですよね。
漆塗りってどうなん
それらの知識を踏まえて、ガンプラ漆塗りの工程をば。
とりあえず表面処理です。ゲート処理やヒケの処理をします。
今回は240→400→600→800で処理しました。
完成した後だからわかるんですが、そこまでしっかりやらなくてもよかったですね。
というのも、筆塗りなんでどのみちムラはできるし、漆って塗膜がなんていうか、厚みがあるのかふっくらするのでピシッと直線的にはならないんですね。有機的というか。
なのでこれにかけた1ヶ月は割と無駄でした。つらい。
でもサフの食いつきを良くする必要があったので、全くいらない作業ではなかったのが救いです。
洗って乾かして仮組みとかしました。
シタデルカラーも塗りました。
これもこれでクセがあるんですよね。まだ全然慣れません。でも楽しい。
下地を吹きました。
正直、プラスチックに漆を塗るのは初めてだったので、下地を吹くべきか否かわかりませんでした。
そこでテストピースを使ってプラに直接塗ってみたのですが、見事に剥がれました。
でもサフ何使ったらええんやろと思い店員さんに聞いてみたら、こちらをおすすめされました。
ホイホイ買いました。
結果いい感じになったのでよかったです。というかこれじゃないとダメだったぽいことが後でわかります。
そんなこんなで呂色漆を塗りました。
漆塗りの工程では下塗り、研ぎ、中塗り、研ぎ、上塗り、という感じで最低3回は重ねるのですが、今回は黒パーツは2回しか重ねてません。赤に至っては一発勝負です。
なぜなら研ぎが思った以上に難しかったからです。細かすぎる。多すぎる。諦めです。
でも意外といい感じになったのでよかったです。
無論ダメなところもあります。ゴミが死ぬほど入ってる。
漆は基本刷毛塗りです。これをいうと毎回びっくりされますが、漆塗り用の刷毛には人の髪の毛が使われてます。
でも今回はパーツが細かいので普通のタミヤのナイロン筆を使いました。
刷毛塗りの時は、仕立てとして刷毛の中のゴミを出すため、糊をつけてヘラで突き出すという工程を茶碗一杯分やるのですが、それも省きました。
それもあってすごいゴミがキラキラしてます。つらい。
赤パーツも塗りました。呂色漆は半艶ですが、赤の漆は油が入ってる朱合漆を使っているので艶があります。
ここで失敗しました。写真は同じ時間と条件で塗ったパーツです。色と艶が違います。
漆はある程度の温度と湿気、空気が動かない場所でないと乾きません。
ラッカー系などの溶剤が揮発して乾くのとは原理が違います。どっちかというと酸素と結合して硬化するシタデルと似た原理かもしれないです。
異なるのは硬化時間。漆は一定の温度と湿度で最低2日以上置かないと乾きません。なんて手のかかる子なの!
で、何が言いたいかというと、今の時期は乾燥してますよね。湿気を足そうとしてお湯を沸かしてパーツを乾かしてる衣装ケースに鍋ごとぶち込んだんですね。
そしたら表面が急に乾いて、本来の艶がある塗面ではなく曇った塗面になっちゃったんです。
あと内側の漆が乾かないまま表面だけ乾くと、塗膜がよれてしわしわになります。なりました。これを「ちぢむ」といいます。画像はきもいので撮りませんでした。
マジで心折れそうになりましたが、ヤスリで研いで塗り直しました。
上手くいったパーツがこちらです。
乾いたばかりの赤は暗めの色ですが、経年変化で明るくなります。「色が冴える」ってやつです。一発勝負にしたのでエッジの下地が透けてますが、これはこれで好きです。
後日、武器パーツも別個で作ろうとしてたんですが、違う下地を吹いたからか全パーツの塗面がざらっざらになってました。久々に本気で泣きました。
ここで心が完全に折れて放置してます。
完成ということにした
そんなこんなでできたのがこちらのエピオンです。
かっこいい。
漆特有の赤と黒がいい感じになってると思います。
トップコート無しでこの艶感です。さすが伝統工芸の名をほしいままにしているだけはありますよ。
でもぶっちゃけ言うと、趣味でやるもんじゃなかったですね。
めっちゃ大変でした。漆も安くないし…。
でもかっこいい…でもほんとは沈金とか蒔絵とかもやりたかった…でも…。
未練もありますが、数年ぶりに触った漆作品にしてはちゃんと完成までこぎつけられたのでよしとします。
次何を作るかは未定です。積んでるのも結構あるしやってみたいことも色々あるけど、結構燃え尽きてます。やれやれだぜ。